山とメスティンと廃人。

いつか本当の頂を踏み占める日まで

【第3歩】初ソロ登山で初心者が雪山に行ってはいけない


本格的にソロ登山を始めるために登山靴やウェアなどを手に入れた私は幾分舞い上がっていたのかもしれない。

 

『富士山?そんなの楽勝に登れるっしょ!』

 

心の片隅にそんな油断があったのか?さっそく登山靴を試したいがあまり登山の知識などを頭に入れることなくとある山へと向かった。県内のオススメ山を検索して良さそうな場所だったのである。

標高は1200mほどであり、まだ低山の範囲。とりあえず家でメスティンご飯を炊いて頂上で食べる計画である。家から1時間程度の距離で天気は曇り予想。9時出発進行10時到着の予定であったが途中で道に迷い、登山道前駐車場に20分遅れで到着した。

この時点で12時ちょうどに頂上でメスティンご飯をいただく計画に暗雲が漂う幕開け。予想が外れたのはそれだけではない。

 

☃雪積もってるやんっ!☃

 

駐車場には薄っすらと冬景色が出来上がりつつあった。でも幸い雪はちらついていない。頭の中には

❝頂上❞

の2文字しか浮かんでおらず、すぐさま登山靴に履き変えて登り始めた。

 

 

〜失敗その1〜

登山ルートが頭に入っていない

 

 

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駐車場から登山道入り口までは少し歩かないといけないのだが、山頂までのルートは看板で記されていた。これを何となく見てすぐさま出発した。

案の定登山道ではなく工事車両用の車道から入り口を目指すことに。

登山ルートが明確ではない登山初心者を待つ結末はいかに。

 

 

整備された車道をひたすら歩き、分岐点はを頼りに少しずつ上がっていった。標高が増すにつれて雪がちらつき始めたことが気がかりであったがとにかく前進。どうにか山の登山道入り口に辿り着いた。

 

 

〜失敗その2〜

山ノートに記さずスタートする

 

入り口にある休憩所に一冊の古びたノートが置いてあるのに気付く。さすがに初心者の私でもこのノートが何を意味しているのか察した。

 

『誰かの忘れものかしら…』

 

いやそうじゃない。山歩きの所持品に大学ノートは相応しくないのである。

万が一のときに山に登っていた事実を書き留めるためのノート。

『こんなの誰も書かんやろ。』

 

このノートが存在している意味までは知る由もなかった。遭難や災害に遭う恐れがあるからこそ置いてあるのである。

 

 

それからやっとスタート地点に到着。時間が押していたので休息も一瞬で済ませて登山開始。整備された登山道にはさほど雪が積もっておらず進むべきルートが分かりやすかった。ここから徐々に白きモンスターがその本性をあらわすのである。

 

〜失敗その3〜

雪で登山ルートを見失う…方角もわからず。。。

 

 

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雪で覆われた地面。進むべき方角を知らない登山初心者。この両者が交わることで脱線する確率が跳ね上がる。

紛らわしい分岐らしき点で立ち止まる。広範囲を観察してそれらしき道を探す。迷ったときこそ方角に頼るのが無難である。それすらわからないコンパスないスマホの電波ないの

負のトリプルスリーを達成。

こうして次第に正規ルートを外れていくのであった。それでも己の感覚を頼りにがむしゃらに進む。ブーツが隠れるほどの雪に埋まりながらもまだ雪遊び感覚がある。平凡な生活から外れてしまった廃人は登山者となってもなお道を外し続ける。ただ山頂へと向う気持ちとは裏腹に衰え始めた初老の身体が悲鳴を上げる。

初心者とはいえさすがに

これはおかしい。

と感じた。ひどく険しいのである。思わず眉間に縦ジワが入る。無理矢理雪の斜面に抗う感覚。雪と格闘しているようだった。スケールのデカい大雪山にちっぽけな廃人が勝てるわけなき。思考回路はショート寸前。

後に知ったのだが本来進むべき方角は北。疑惑の分岐点から進んでいた方角はおそらく東。寒気と身の危険を感じ取った私は岩に腰掛けて一旦冷静になることに。まだ足跡を辿れば戻れる範囲。

戻る時間と無駄に消費した体力を考慮して山頂へは諦めることにした。無事帰還することが第一。廃人でもまだ生きようとする気持ちを実感することが出来たのが今回唯一の収穫か。

 

 

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今日のお昼はシャケともやしにかつおぶしの香りを添えて♫(メスティンご飯)

 

 

中の人が美味しくいただきました。普段は食べないシャケの皮も生きるか死ぬかの場面では貴重な栄養源。残さず平らげました。

昼休息も手短に済ませて来た道を必死に戻る。既に自分の足跡なのかもよく分からなくなり迷ったが何となく合っていることを信じて進む。無造作に生えている木や岩はこれといった特徴もなくイマイチ確信が持てずにいた。雪さえなければ記憶力の悪い脳でも何かしら覚えるものだが。

 

しばらく進み、道を見失い始めたポイントまで戻ることに成功した頃、突如驚くべきことが起こった。

 

 

人に遭遇。

 

山の中でに出遭うことも驚くがいきなり人間が現れるのもかなりの驚きである。この日は雪もちらつく平日ともあり駐車場には誰もおらず貸し切り状態と思っていたから尚更である。

だが、これはある意味運が良かったともいえる。

 

『こんにちは。道に迷ってしまいまして…道ってわかります?』

 

齢60を超えていると思われるおじさんであった。

 

『ちょっと待ってよ〜』

おじさんはiPhoneを使い調べ始めた。私もスマホで調べるのだが電波が繋がらずただの物体と化していた。

『もっと北の方じゃないかな。』

おそらく観ていたのは地図アプリで登る前からちゃんと頭に入れてからスタートしているのであろう。不測の事態を想定していなかった初心者に雪山は本当に危ない。一歩間違えたら大事では済まされないことを経験させていただきました。

 

『上まで一緒に登りましょうか。』

一度は諦めた山頂をもう一度目指すことになった。とても優しいおじさんだった。その道中でおじさんは色々なことを初心者に教えてくれた。

『時計の短針を太陽に向けて12時との間が南だよ。』とか毎週聞いている登山関係のラジオ番組とか山の暗黙のルールとか。

今回登った山の市内在住の高木さんであることもわかった。仕事を引退して趣味で登山をしており、たまたま後日友人と登る前の下見で来たとのこと。

後でわかったのだが登山道から外れた足跡が気になり様子を観に来てくれたようです。本当に感謝。

私には分からなかった登山道も方角と経験から察知して先導してくれた。

途中までの下見のはずが、最後の山頂まで先導していただいた。本当に優しいおじさんだった。

 

 

 

 

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無事山頂に到着。

別の道から来たカップルがいたがこの日来た道から登ったのはおそらく2人。ほんと運が良かったとしか言いようがない。

『記念に一枚撮りましょうか?』

せめてものお礼に記念写真を撮らせていただいた。おじさんのおかげで私の記念写真も撮っていただけた。

 

 

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 山頂の雪量はこんな感じ。デビュー戦となった登山靴もちょうど良いサイズで痛みなく登ることが出来た。これ以上積もると本格的に雪装備が必要となる。いずれは険しい雪山にも挑戦したいと思った。

 

結果としては大失敗のソロ登山デビューであったが、ソロからまさかのコンビ登山となり、安心して無事下山出来たことが何よりである。

山を登る上での数々の知恵を実際に経験者から教わりながら楽しく登山出来たのはなかなかない経験であり、今後の登山に活かす教訓となるのは間違いない。

 

『本当にありがとうございました。助かりました。楽しかったです。』

 

山の上ということもあり何もお礼出来なかったことが残念であった。

 

『いえいえ。こちらこそ助かりました』

おじさんにとっても誰かがいることで多少は安心して登山出来たのかもしれませんね。優しい紳士的なおじさんで良かったし、人に狂わされて信じれなくなりかけていた廃人でも

❝やっぱ人っていいし捨てたもんじゃないな❞

と改めて思ったほろ苦くもあり2度とない貴重な経験をしたデビュー戦でした。